生前、寝たきりになった父親を自宅で介護していたなどの事情がある場合、他の相続人と相続分が同じでは、不公平に思えるのも当然です。こうしたケースでは、「寄与分」として相続分が増えることがあります。
ただ単に介護をしていたというだけでは相続分は増えませんが、介護をすることで被相続人(亡くなった人)の財産形成に寄与した場合、相続分が増えることがあります。例えば、相続人が介護することで出費が減ったなど、特別な貢献を寄与分として認められる場合があります。他には、家業を無報酬で手伝うなど、労務の提供や財産上の給付も寄与分として認められる可能性があります。
寄与分が認められるのは相続人だけで、相続人でない兄弟が事業資金を提供したとしても、遺産から寄与分はもらえません。また、夫婦間や親子間の通常の助け合いも、寄与分にはなりません。
寄与者(寄与分をもらえる人)がいる場合、相続財産から寄与分を引いた額を、相続人で分配します。寄与者は分配された額に寄与分を加算した額が相続分になります。
例えば、相続財産が1億円で、相続人が兄弟3人の場合、同居していた長男に寄与分1千万円が認められたとします。この場合、1億円から1千万円を引いた9千万円を相続人3人で分割することになります。したがって、長男は3千万円に寄与分1千万円を足した4千万円を相続し、二男・三男は3千万円ずつ相続することになります。
寄与分の額については、相続人同士の話し合いで決めることになりますが、話し合いで決まらない場合、寄与者の請求により家庭裁判所が定めることになります。