家族信託活用の前に確認しておきたい注意点

2022年09月05日

家族信託は家族で財産の管理と運用をするためのメリットが多くあるのと同時に注意点もあります。そこで今回は、家族信託を活用する前に確認しておくべき注意点をご紹介します。

家族信託とは

財産の所有者(委託者・受益者)が財産の所有権を移転し、財産の所有権を受けた者(受託者)が委託者の利益のために当該財産の管理や処分を行うことを信託といいます。信託の対象となる財産が比較的少ない場合や、第三者を介入させずに家族内で財産を管理したい場合などに、家族信託は有効です。

5つのメリット

①本人の状態に関係なく財産の管理と処分ができる

本人の判断能力の低下や喪失などが発生した場合でも、本人への意思確認が必要ない為、実質的な資産凍結などのリスクを気にせず、スムーズに財産の管理や処分を実施することができます。

②柔軟な財産管理法として活用できる

成年後見制度であれば、後見人の行動の制約や負担が大きくなってしまうが、家族信託の場合、受託者は、本人の要望に沿って比較的柔軟な対応を実施することが可能です。

③相続人の財産管理が可能になる

家族信託の制度の中で、財産管理や生活資金の消費計画などを補助することが可能になります。

④遺産を承継する道筋を示すことができる

家族信託は契約を工夫することで遺言のような機能を果たすことが出来、それを活用することで、二次相続以降の遺産の承継先を示すことができるようになります。

⑤不動産の共有によるリスクを防止できる

不動産の共有に伴う様々な不都合を未然に防止し、時期を見逃さない売却などを実現しやすくなります。

家族信託の注意点について

家族信託は多くのメリットがある一方で、実施する場合にはいくつか注意する必要があります。
家族信託を運用する場合、ただなんとなく役に立ちそうだからという理由で決めるのではなく、それによって何を実現したいのか、運用の目的を明確にすることが大切です。
相続税対策、成年後見人制度の代替、効率的な財産管理、資産凍結の防止、事業承継の実現など、家族信託で実現しうる目的は様々です。
運用の目的を明確にすることで、家族信託を実施するにあたってどんな点に特に注意すべきか見えてきます。

3つのデメリット

①長期間にわたり当事者を拘束する可能性がある
家族信託の機能の1つとして、一次相続や二次相続に関する資産の承継先の指定が可能です。承継先を指定することで相続人の間で争いが発生するリスクを減らすことができます。

ところが、家族信託によって承継先の指定をすることは、資産の処分に長期間の制限をかけるものでもある為、運用方法を誤ると多くの者を不当に拘束してしまうというリスクもあります。
必要に応じて関係者との話し合いや、合意の形成なども後の弊害を回避するために重要になってきます。

②損益通算ができなくなる
アパートやマンションなどの収益物件を、信託財産に含めた場合、法律によって当該不動産に対する年間収支上の赤字は存在しないものとみなされます。
赤字があってもなかったものとされることで、当該不動産についての損失は、信託財産以外の所得と損益通算出来ません。加えて、損失を翌年に繰越しすることもできなくなります。
それによって税務上の不利益が生じる可能性がある為、家族信託を設計する場合の不動産の取り扱いについては、必ず税理士に相談しましょう。

③税務申告に係る事務作業の負担が増加する場合がある
家族信託における信託財産から不動産所得が得られる場合、税務申告における一般的な提出物である明細書だけでなく、信託財産に関する明細書も別途税務署へ提出が必要。
また、資産の一部または全部を信託財産に含めることにした際、年間3万円以上の収入が信託財産から得られる場合には、信託計算書や信託計算書合計表などの書類を税務署へ提出が必要。

家族信託に精通したエキスパートは多くない

家族信託は、成年後見や相続などに関連する制度の中では、比較的新しいものです。
そのため、法律や税務などに精通した専門家や信託銀行の営業マンであっても、家族信託に詳しいとは限りません。何十年も影響のある老後の財産管理や資産承継です。
家族信託を検討する場合、単に専門家というだけでなく、家族信託自体についての知識や実務経験を有する安心できる専門家を見つけて相談することが大切です。
実績豊富な当協会へご相談ください。

 

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