「相続分のないことの証明書」とは、特別受益の規定を利用して事実上の単独相続を実現させるもので、【特別受益証明書】とも呼ばれます。わかりやすく証明書の内容を説明しますと、「私は被相続人の生前すでに相続分以上の贈与を受けているので、受ける相続分はありません」といった内容の文面が書かれており、そこに押印し、自分は遺産を相続しない旨を証明するものです。この書面を、ひとりの相続人がほかの相続人全員から集めれば、遺産分割協議をしないで自己名義とする相続登記単独相続が可能になるため、実務上使われることがあるのです。
特別受益の規定
被相続人から特別の利益を受けている相続人を【特別受益者】と呼びます。このような生前の贈与は、「遺産の前渡し」とみることができるので、特別受益者が受けた贈与の額を相続財産に加え、その額をもとに各相続人の相続分を決めることになっているのです。
<特別受益になる主なケース>
・遺贈を受けた
・結婚に際し持参金や支度金をもらった
・独立開業するための資金を援助してもらった
・住宅の取得資金を援助してもらった 等
特別受益証明書へ押印する際の注意点
しかし、登記に必要な書類だからと説明され、法的な意味をよく理解しないまま押印してしまい、のちにトラブルに発展するケースも少なくありません。この場合、実際には生前贈与を受けていなくても、共同相続人の話し合いの過程で自分の相続分を放棄または贈与したものとみなされることがありますので、そうでないのであれば安易に押印しないよう注意が必要です。また、この証明書に納得して押印していても、相続放棄をしない以上、被相続人の債務は承継することになります。その点も含めて慎重に判断してください。
上記は、被相続人の生前に贈与を受けている場合の相続手続きで発生するのケースの一つです。このようなケースもあるのだと覚えておくと良いでしょう。何かわからないことがありましたら一度専門家にご相談ください。