遺言書には、基本的に何を書いてもかまいません。ただし、書くことで法的拘束力を持つ内容については限定されています。また、自筆証書遺言で書き方に誤りがあった場合には、民法に定められたルールにより無効になることがあるので注意が必要です。今回は、遺言書の内容に関する規則やルールについて説明します。
効力を生ずる遺言の内容は法律で決まっている
『遺言書には、財産の分け方が書いてある』というイメージを持っている人が多いかもしれません。基本的にはその通りですが、遺言書に書くことで法的拘束力を持つものは、財産や身分、遺言の執行に関することに限られます。これらは法律用語でいうところの『遺言事項』に該当し、法的な効力が生ずるとされています。たとえば、以下のようなものがあります。
●非嫡出子の認知
●未成年後見人や後見監督人の指定
●相続人の廃除や取り消し
●相続分の指定、指定の委託
●遺産分割方法の指定や遺産分割の禁止
●遺贈に関すること
●生命保険の受取人変更
●遺言執行者の指定
●特別受益の持ち戻し免除
一方で、遺言として残しても法的に意味がないものもあります。「家族みんなで仲良く暮らすように」「今までありがとう」などは、法的拘束力を持ちません。ただ、遺言書で、自分亡き後に残された家族に意思を伝えたいという人は多いものです。こうした内容は『付言事項』として遺言書に書き残すことができます。遺言は民法によって書き方が厳格に決められているため無機質なものになりがちです。最悪の場合、遺言を書いていてももめてしまうケースもあります。こうした付言事項を付け加えることによって本当の意味で血の通った暖かい遺言書を残すことができます。
遺言書を有効にするには守るべき要件がある
遺言書として残しておけば、必ず効力を生ずるかといえば、そうではありません。その遺言書がちゃんと民法の規定通り、正しい記載ができているかも問われます。たとえば、一般的な『自筆証書遺言』であれば、遺言者が遺言内容、自身の名前、作成日を自筆で書き、捺印していなければなりません。財産目録以外は、自筆であることが条件なので、財産目録以外の部分をパソコンで打った自筆証書遺言は無効です。また、自筆証書遺言に訂正や加筆をするときには、単に二重線などで元の文を取り消して、上に書き足しただけでは不十分です。訂正したところに印鑑を押し、さらに遺言書のなかで、どのように変更したのか(どの場所の文字を訂正したのか、何文字を削除し、何文字を新たに書き加えたのかなど)を付記、署名します。このような、法律に沿った形式を守らなければ、遺言書として効力が無くなり単なる書き置きになってしまうのです。要件の不備により無効になるリスクを回避するには、専門家に相談の上確実性の高い公正証書遺言での作成をおすすめします。
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