山林の相続における困りごと

2021年06月07日

山林相続ではどんなことに困り、それに対し生前に準備できるのはどのような点でしょうか。まず山林の相続は3つの手続きが必要です。

①他不動産同様に法務局で名義変更のための相続登記                                                     ②森林の所有者となった日から90日以内に、取得した土地のある市町村の長へ届出                                  ③該当山林を管轄する森林組合へ連絡し、所定の手続き

では、これら手続きによって相続した山林において、どのような問題が起きているでしょうか。

1.対象となる山林の場所・境界が分からない

相続人の通い慣れた土地であれば、基本的な位置・範囲の把握は容易です。しかし山奥にあり長年置き去りにされた土地の場合、実際の場所や境界は非常に曖昧となります。そこで公図や境界標をもとに山林境界を把握しようにも、明治時代に作られた公図は不明確なものも多く、境界杭も定期的に手入れしていなければ劣化しています。

2.山林の活用・使い道がなく持て余す 管理できず荒れる

今現在も木材利用が活発に行われていたり、将来的に宅地開発等の需要が見込まれる土地でなければ、相続後も同様に使い道がなく放置されがちです。定期的な間伐や下草刈りといった森林整備が行き届かなくなった場合、倒木や豪雨時に土砂崩れの恐れがあります。

3.いざ手放そうとしても山林の処分が難しい

様々な理由で相続した山林を手放したい際、需要の見込める土地でなければ、売却・寄付ともに引受手を見つけることは難しいです。またお金を支払って業者や行政に引き取ってもらう場合も、数年分の土地管理費相当額の負担金が発生します。さらに土地を手放そうと名義を確認すると、数代前の亡くなった方のままになっていることが珍しくありません。不動産登記の名義変更をするには、相続人全員の同意が必要なため、遡って各世代の相続人を特定し、相続人の全員の同意を取り付ける手間が生じます。

 

このような問題が起きないように、現所有者と受継ぐ予定の方が健康なうちに、実際に対象山林を歩き、カメラと公図を手に境界の目印を共有することが大切です。そしてその際にこれまでの土地利用の歴史や、森林組合など現在の管理状況、隣接する所有者等、山林所有にあたり必要な事柄を伝え合いたいものです。所有する山林の話をする機会は中々少ないものですが、資料だけでは伝わらない点が多々あるからこそ、ご自身の山林に目を向けて頂けたら幸いです。