遺産の分割方法が決まったら、次はいよいよ遺産分割協議書の作成です。
どのような内容を記載すればよいのでしょうか?
また、決まった形式はあるのでしょうか?
遺産分割協議書は、銀行の解約、不動産の名義変更、相続税申告などでも使用する重要な書類です。
特に決まった形式はなく、パソコン、手書きのどちらでも構いません。
相続人同士の話し合いがまとまったら、それだけでいいのではないか? わざわざ文書にする必要がない・・・などと考える方もいるかもしれませんが、遺産分割協議書を作成するには理由があります。
<遺産分割協議書を作成する理由>
①無用なトラブルを避けるため
一番の目的は、きちんと記録を残すことで、後々の無用なトラブルを避けることにあります。
兄弟間の口約束は有効でも、当事者が亡くなって、その後の相続人同士の記憶が異なる場合もあります。
遺産分割協議書を作成しておけば、誰がどの財産を相続したかは明白ですし、相続人全員が協議に参加して了承したことも明白です。
②相続手続きに使用するため(実務的な目的)
銀行の手続き、不動産の名義変更、税務申告など、相続の手続きを行う場合に、遺産分割協議書が必要となってきます。
正確に言えば、金融機関の手続きの場合、各銀行・証券会社などで、独自の遺産分割協議書(に代わるもの)があります。
それは、「その金融機関の財産についてのみ」協議を行った証拠となる書類です。
書類の名称は、「相続届」だったり、「相続手続依頼書」だったり、銀行によって様々です。
そのため、お客様の中にも、遺産分割協議書を作成する前に、「すでに預金の解約は終わっています」と言われる方もいらっしゃいます。
先に解約を行って、一時的に一人の相続人の口座に入金しておく、あるいは現物分割などで各相続人へ分けてしまうなど、手続きを先に済ませても、特に問題になるわけではありません。
ただ、取引銀行がたくさんあったり、登記や税務でも遺産分割協議書を使用する場合、その都度、それぞれの書類に相続人全員が何度も署名・押印するのは、かなり煩雑です。
すべての手続きに共通して使用できる遺産分割協議書を一つ作成しておくことで、手続きを簡素化することができます。
このように、遺産分割協議書を作成しておくメリットが分かったら、あとは実務として有効な書類を作成するだけです。
先ほど述べたように、遺産分割協議書自体には、特別に決まった様式などはありません。
パソコンで作成してもいいし、今ならインターネットで「遺産分割協議書 ひな形」などと検索すれば、たくさんのサイトでダウンロードすることができます。
縦書きでも、横書きでも、形式・書式は問わず、作成できます。
お客様の相談を受ける中でも、ご自身で作成された遺産分割協議書をチェックしてほしいといったご要望もあります。(弊社では遺産分割協議書のチェックは行っていません)
また、他社(あるいは当社とは関わりのない専門家)が作成した遺産分割協議書を見る機会もあります。
もちろん、プロにも負けないぐらいきちんとした遺産分割協議書を作成されているケースもありますが、実際に手続きを行う側から見るといくつも不備があるようなケースもあります。
(相続に慣れていない専門家の作成した遺産分割協議書にも、このような不備はあります)
せっかく遺産分割協議書を作成して、相続人全員の署名・押印をしても、結局銀行では有効と認められず、新たに銀行の様式で出し直さなければならない場合もあります。
(銀行員からは、そういった説明が無く、手続き書類を増やされている場合もあります)
形式・書式が自由なため、有効な遺産分割協議書についてすべてを説明するのは難しいのですが、いくつか注意点を挙げます。
<注意点>
- 誰がどの財産を取得したかが、第三者にも分かるように記載する。
不動産であれば登記簿の通りに記載し、銀行預金は支店名、口座番号、死亡日の残高などを正確に記載しましょう。
- 相続人全員の署名(または記名)・押印が必要。
印鑑は必ず実印を使用し、住所は印鑑証明書の通りに記載しましょう。
また、相続分が無い相続人も署名・押印が必要です。
相続放棄した方は遺産分割協議には参加する必要がありません。
- 債務の分割方法や、代償金額についても、記載しておきましょう。
「債務」とは、お葬式代や、故人が支払うはずだった固定資産税など、マイナスの財産のことです。
相続人が立て替えているケースが多いので、後々の無用なトラブルを避けるためにも、忘れずに記載しておきましょう。
代償金については、どの財産を取得する代わりに支払うものなのか?といった内容や、支払いの期限なども決めておくことができます。
注意点を挙げるとキリがないのですが、せっかく作った遺産分割協議書を有効なものとするためにも、記載内容は十分慎重に決定する必要があります。