交通事故などで被害者の死亡による損害賠償請求権が相続の対象となるかについて、判例は受傷の瞬間に被害者に損害賠償請求権が発生し、それが被害者の死亡によって相続人に承継されるとしています(大判 T15.2.16)。
ただし、慰謝料請求権については、それが被害者の精神的苦痛に対する損害賠償請求権であるがゆえに、被害者の一身に専属する権利として、被害者が生前に慰謝料を請求する意思を表明していた場合に限り、通常の金銭債権となって相続の対象になるとされていました。
しかし、被害者が生前に慰謝料請求の意思を表明できるかどうかはまったくの偶然にすぎず、それによって賠償額に差が生じるのは妥当ではありません。
そこで現在は、被害者損害発生と同時に慰謝料請求権を取得し、被害者が死亡した場合、生前それを放棄したと認められるような特段の事情がない限り、当該慰謝料請求権は相続の対象になるとされています(最大判 S42.11.1)。