死後に自分の意思を託すものに、遺言があります。これらに加え、近年ではエンディングノートを作られる方も増えてきました。それぞれを同じように捉えてみえる方も多いようですが、注意すべき大きな違いがあります。それは、遺言には法的効力がありますが、エンディングノートには法的効力がないという点です。つまり、エンディングノートを遺言のつもりで書いたとしても、それが死後に実現できないことがあります。
せっかく書いても希望が実現しないケースとは?
エンディングノートを書いたAさん。奥様は既にお亡くなりになり、子どもが3人(Bさん、Cさん、Dさん)います。Bさんは、Aさん宅の近くにお住まいで、身の回りの世話を献身的に行ってくれました。一方のCさんやDさんは、地元を離れ年に一度顔を見せるかどうかの状態で連絡を取り合うことも一切ありません。また、学費や生活費の仕送りをBさん以上にしていたという背景がありました。そのため、Aさんはエンディングノートに資産の大半(自宅の不動産とその他財産の2分の1)をBさんに、その他財産の4分の1ずつをCさんとDさんへという内容を遺しました。今回の法定相続人であるお子様3名が全員納得すれば、Aさんの思いは実現することとなります。しかしながら、1名でもその内容では納得できないと主張すれば、遺産分割協議はまとまりません。まとまらないと場合によっては家庭裁判所での調停・審判などで分割方法を決定していくことになります。そうなるとAさんの思いは実現できないという悲しい結果となりますし、今後3名の関係性が悪くなってしまいます。
もちろん、エンディングノートを書くことで自分の人生を振り返り、大事なことは何か、伝えたいことは何かを整理するにはいい手段ではあります。また、それを見た家族が今まで知らなかった思いを知ることができ今まで以上に家族の絆が深まることもあるでしょう。
よって、確実に遺したい方、遺したい資産がありましたら遺言を残されるのが良いでしょう。しかしながら、遺言書の書き方や内容によっては効力を失い、相続手続きの際に活用できない場合があります。心配な方は一度専門家に相談することをお勧めします。