相続税申告~相続財産には何があるか①の続きです。
<生命保険>
生命保険は受取人に指定されている人固有の財産で、相続財産には計上しません。ただし、生命保険でも契約内容によっては相続財産に含まれるケースがあります。生命保険で重要なのは、「契約者」「被保険者」「受取人」が誰の名義になっているかという点です。申告から漏れやすいのは、被保険者が被相続人以外のケースです。契約者である父親が亡くなっても、被保険者が母や子の場合、保険契約は終わりません。契約者である父親が保険料を負担していた場合、貯蓄保険だと父親の財産とみなされるケースがあります。その場合、父親が亡くなった時点で保険を解約すると、受取額がいくらになるのかといった残高証明書を取る必要があります。税務での申告漏れになりやすいケースです。
<借入金>
銀行の場合、残高証明書を取れば、借入金も判明しますが、個人間での借入れについては証拠となる資料がないと分かりません。最も大変なのが保証債務で、故人が連帯保証人となっていた場合、亡くなってから2~3年後に債権者から請求されるケースがあります。この場合、相続放棄をしていないと、相続人には支払いの義務があります。
<未払い金>
病院への治療費など、亡くなった時点でまだ支払っていないお金なども未払い金として計上できます。葬式費用もこれに含まれますが、初七日以降は税務上、相続財産に含まれません。最近では、お布施も領収書をもらえるケースがあります。請求書、領収書などは捨てずに保管しておきましょう。
<生前贈与>
亡くなる3年以内に相続人に贈与した財産は、贈与税額控除の規定により、相続財産に含まれます。死期が近くなると、急に配偶者や子に贈与を始めるケースが多くみられますが、相手が相続人の場合、生前贈与しても相続財産に計上する必要があります。
このように、チェックリストに基づいて計上財産に漏れがないかを確認します。その後、金融機関などから残高証明書を取得し、財産評価を行います。作成した財産目録を基に、相続人同士で分割方法を話し合い、遺産分割協議書を作成します。それとともに、税理士が相続税を計算し、申告します。申告は、亡くなられた日から10か月以内と規定されており、それを過ぎると延滞税がかかります。また、未申告の場合は無申告加算税、意図的な申告遅延は最悪の場合、重加算税が課せられる可能性があります。
相続税には「基礎控除」というものがあり、3,000万円+600万円×(相続人数)以下であれば、相続税がかかりません。当社に相談に来られる方の中にも、相続税申告が必要かどうかを心配されている方が多く見られます。
ただし、この計算で基礎控除額以下だからといって、安心はできません。前述の内容以外にも、申告から漏れやすい項目は多くあり、プロの目から見た確認が必要となります。