相続税申告と名義預金

2013年08月20日

相続税がかかりそうな人が、税金対策としてよく活用するのが「110万円以内の子や孫への贈与」です。ただ、注意しないと相続時に、「名義預金」として、相続財産とみなされます。

先日の相談の際に、相談者の方とこんなやり取りがありました。

相談者:「私は、ずいぶん前から子や孫に財産を分けているから、相続税はそんにかからないはずだよ。」
担当者:「子や孫の銀行口座に入金されているのですか?」
相談者:「そうだよ。110万円以内の贈与なら非課税だから、その範囲内で毎年振り込んでいるんだが。」
担当者:「そのことはお子様やお孫様はご存知ですか?」
相談者:「いいや、子や孫の通帳は私が持っているし、伝えてもないので何も知らないよ。」

上記は、とてもよくあるケースですが、相続が発生したときに大きな問題になります。いわゆる「名義預金」とみなされる可能性が高いです。

110万円以内の贈与であれば確かに非課税ですが、このケースでは贈与ではないとみられてしまうのです。そもそも贈与とは、渡す側ともらう側の両方が合意することで成立します。つまり、子どもや孫がその事実を知らなければ、贈与は成立していないことになります。

税務当局は、「子や孫の名義にはなっているけど、お父さんの財産ですから、相続財産にプラスします」と判断するわけです。

「いやいや、そうは言ってももう 10年以上前のことだから、時効でしょ?」と言いたくなりますが、もともと贈与が成立していないので時効という概念はありません。あくまでも最初から、お父さんの財産とみなされてしまうことになってしまうのです。

ちなみに、相続税調査での税務否認項目のトップは、この「名義預金」ですので注意が必要です。