今回は、本来相続人となる方が、その権利を奪われる場合について説明します。
①相続欠落の事由に当たる場合
本来、相続人となるべき者が、相続する権利を奪われる場合があります。その一つが相続欠落です。たとえば、遺言を偽造したり、親をだまして書かせたり、ましてや殺してしまったりした者が、その遺産を相続するなど到底許されません。このような非行のあった相続人は、なんの手続きをすることなく相続権を失います。
②相続人の廃除
将来、相続があった場合に最優先で相続人となる人を推定相続人といいます。この推定相続人に、相続欠落ほどではないにしろ、被相続人を虐待するなどのひどい非行がある場合は、被相続人の意思によって相続権を奪うことができます。
凶悪なドラ息子にはびた一文も遺産をやらない、と遺言しても、子には遺留分があります。そこで、相続人の地位そのものを剥奪するというのが、この相続人の廃除という制度です。排除の対象となるのは、遺留分を持つ推定相続人、すなわち配偶者、子とその代襲者、直系尊属です。遺留分のない兄弟姉妹は対象になりません。
廃除したい推定相続人がいるときは、家庭裁判所に廃除請求の申立てを行うことが必要です。また、遺言でその旨を意思表示してもよく、この場合は遺言執行者が申立てを行います。
廃除の理由として認められるのは、被相続人に対する虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行です。
ただし、一時の激情による暴力や単なる素行不良だけでは、通常は廃除できません。廃除を認めるかどうかは、家庭裁判所が家庭環境などの非行の原因にまで踏み込んで、個別的に判断することになります。
なお、廃除の確定後、被相続人は家庭裁判所への請求または遺言によっていつでも廃除を取り消すことができます。また、廃除された者に遺贈することも可能です。