最近相続手続きされたお客さんから聞いた話です。「いつも来てくれている銀行の行員さんから投信乗り換えを勧められ、言われた通りにしていたら、いつの間にか元本が大きく目減りした。」
日本経済新聞に「投信、乗り換え販売増」という見出しの記事が以前に掲載されていました。その見出しだけ見ると、金融資産に投資する人が増えてきて景気が良くなってきているのだな、と感じた方がいるかもしれません。しかし、記事内容はそうではなく、「銀行の投信販売は伸びているものの、預かり資産は横ばい」ということでした。この要因の1つは、売ったり買ったりする頻度が多いため、販売額は伸びているが、売り買いのコストで投資家の預かり残高は目減りしているということではと思います。
銀行が積極益に販売する投信の一般的な買い付け手数料率は 3%%前後、さらに信託報酬(投信保有者が負担する運用コスト)は年率 1.5%前後です。
銀行が一番おいしいと思うお客様は投資信託を短期で売買してくれる人です。1,000万円の運用をしている人が 1年間に 3回売り買いをした場合、買い付け手数料 100万円弱、信託報酬で約 15万円、合計 115万円弱の手数料を銀行は取ることになります。それを繰り返した場合、お客様の元本は手数料によって目減りして、目減りした分銀行は儲かる、という形になります。お客様が泣いている裏で、ひょっとして行員さんは笑っている? かもしれません。
いつも来てくれる行員さんが愛想よく「投資信託でいいものあります。乗り換えしませんか?」という言葉が出たら、この話を少し思い出してください。