遺言書で遺言執行者を指定するメリット

2014年04月14日

遺言とセットでよく耳にする言葉に「遺言執行者」がありますが、そもそも何をする人なのでしょうか。

簡潔に言えば、「遺言執行者とは遺言に書かれている内容を、そのとおりに実行する人」ということになります。遺言を書く場合には必ず指定しなくてはならないというものでは、ありませんが指定があるとその後の手続きがとても楽になります。

不動産の名義変更は、遺言書に遺言執行者が指定されていなくても手続きすることは可能ですが、預貯金の場合は、遺言書があっても、遺言執行者が指定されていないと金融機関は相続人全員の署名と実印の押印、印鑑証明書の提出を求めるケースがほとんどです。

ところが、遺言書に遺言執行者の指定があれば、遺言で預金を相続する人の署名押印のみで、名義変更や解約手続きができることとなります。(※ 金融機関によって多少異なります)当協会に持ちこまれる案件でも自筆遺言では、遺言執行者が指定されていない場合がほとんどで、市販の相続本にも遺言執行者の事があまり触れられていません。

しかし、相続後の手続きを進めるうえでは、実に重要なポイントとなります。遺言では預貯金を長男にすべて相続させるとなっていても、遺言執行者が指定されていないと銀行は解約手続きをしてくれず、結局手続き書類に他の相続人である次男や長女の署名押印を求めてきます。

遺言執行者は相続人でもなれますが、もめそうな場合、第 3者の専門家や専門機関を指定しておくと、相続人同士で話し合う必要もなく相続手続きを進められるので、検討する価値があるでしょう。

例えば、当協会で依頼を受けた中で、次のような事例もありました。

子どものいないご夫婦から、将来の相続時に妻が相続人となる夫の兄弟と話し合わなくてもよいようにということで、公正証書遺言の作成と遺言執行者の依頼を当協会へいただいたことがあります。

夫の兄弟には遺留分がないので、遺言で妻にすべての財産を相続させるとすれば、夫の兄弟は財産をもらう権利がなくなります。それでも実家の財産を兄嫁に持って行かれると考える兄弟は、夫の妻に財産を要求してくる可能性が高いので、遺言執行者を第三者に任せたいという依頼でした。