相続債務は分割できるのか

2014年03月10日

遺産分割と言えば、一般的にはプラスの財産の承継をイメージしますが、場合によってはマイナスの財産(相続債務)があることもあります。具体的には住宅ローンや、他人からの借金などです。では、この相続債務についても、相続人間で自由に分割できるのでしょうか。

遺産のうちのプラスの部分については、相続人の話合いにより、どのように分割してもよいことになっています。ところが、債務の分割は相続人間の合意のみで勝手に決めることはできません。もしも、相続人のみで決めてしまって、返済能力の低い人に債務のみを押し付けることが可能となってしまうと、債権者(金銭等の貸し手)の利益を守ることができなくなってしまいます。

よって、相続人間の協議により合意ができたとしても債権者が承諾しない限りは、各相続人がそれぞれ相続分に応じて債務を負うことになります。

少しややこしいですが、「債権者との債務」は上記のようになっていますが、分割の際に相続人間で取り決めをすることは自由です。どういうことかというと、例えば、亡くなった人の債務が 1,500万円あったとします。相続人は A、B、Cの 3人。

Aがプラスの財産を多く承継する代わりに、1,500万円の借金などを全部引き受けたとします。このとき、債権者からの承諾は得られませんでした。そうなると、債権者は A、B、Cに 500万円ずつ返還を請求する権利をもっていることになります。

協議で、債務を引き継がなかった B、Cにも請求がきてしまいます。このとき、「債権者との債務」関係は避けられないものの、その分を Aに対して請求することはできます。(当然その時に Aが支払う能力があればですが…。)

このように、相続人間でのやりとりにおいて借金等の金額を分割することは可能ですが、債権者の承諾がなければ、実質的な債務の分割はできないということになります。